Thursday 14 December 2017

Letter to O.


Dear O,

こんにちは

貴店から12月上旬に、JIS 漢字字典を購入しました。
今回で二度目の購入で、一度目は安東次男の「現代詩の展開」でした。
安東先生には20歳の初夏に出会い、のちにはご自宅までうかがい、詩人、批評の両面で深い教えを受けました。
その先生の本に再会し、先生の張りのある若々しい声が聞こえてくるような気がしました。
先生の詩集「CALENDRIER」は私の大切な一冊です。

二度とも、丁寧なご連絡と、包装でお送りいただきありがとうございました。
また一度目の私のメールに丁寧なご返事をいただき却って恐縮しております。

amazonは比較的よく利用しますが、貴店のような丁寧な処理をなさる方はいらっしゃらないと思います。
特に包装の丁寧さには、驚いています。
本を愛するお気持ちがひしひしと伝わってきます。
Web検索で、YさんのBlog を拝見しました。

Yさんが大変尊敬なさっておられ、一般書店で十分な経験を積まれて、独立なさった経緯もわかりました。
哲学から文学に至る領域を中心とした取り扱いも、amazonの「ストア」で確認しております。

今日メールを致しましましたのは、貴店の扱う専門領域の中に、言語または言語学の領域がそれほど表面に現れていないように感じ、この領域もぜひお加えになり、領域名の中にも明記していただくと、ストアの存在がより大きくなるように思いましたからです。
Wittgensteinのことばを待つまでもなく、言語が21世紀の大きな中心の一つになっていくことは、私の仕事がそれに触れているからということを離れましても、ほほ確実と思われます。


私は決して言語学ではなく、文字を中心にその周辺で意味や文法を数学を用いながら学んできましたが、1960年代以降の言語の古典にはしばしば立ち返り、新たな方向を示唆されてまいりました。



21世紀は急速なdigital化で、書籍の面でもKINDLEの出現で私も利用していますが、それと物理的な本とは根本的な違いがあり、製本、活字、紙質、形状、初版再販等は、digitalとは別の世界に属します。
言語の方面でも、近年21世紀的な成果が示されていますが、言語の本質は変わることなく、従って言語の古典もその有用性を保ち続けています。

私はある方の著作集の編集等にも関わりましたが、初出の本や雑誌はその人の第一級資料であることを改めて確認いたしました。
辞典などもたとえ簡素であっても、あるいはその故に、古い版が貴重となります。

一例ですが、旺文社は古くから英語辞典を出していますが、その一つにエッセンシャル英和辞典というのがあり、初版は1940年です。
私はこの辞典が少し気になり、amazonでその1979年版を購入しました。内容は現在とは比較にならない簡素さですが、その語釈などに深い歴史的な意義を感じています。
私は普段Web上で英語で書いていますが、本としての英語辞典は、現代社会でdigitalなものがどんなに優勢になっても、変わることはないでしょう。

もう一例、ご存知と思いますが、1936年初版、1958年新版初版の、岩波英和辞典は、小型ですがイギリスのOEDを簡略にした故に、英語名ではSIMPLIFIEDがつけられていますが、今も類書が全く存在せず、孤高の地位を保っています。私も英作文にしばしばひいて参考にしています。この辞典は高校1年の時に購入し利用しましたが、当時はそれほど優れていることには気付きませんでした。

私の申し上げましたことは、書店の経営とはかけ離れたものかもしれませんが、貴店の誠実な方向を拝見しますと、実質的な意味も多少はありますように感じ申し上げました。
貴店のストアはこれからもたびたび拝見いたしたく思います。
図書館関係の本も多く見られ、触手をそそられますが、自分の仕事以上にはなかなか本が読めないもどかしさを感じていますが、大変魅力的であることをお伝え致します。

或る編集者とお話しましたとき、言語関係の専門書は初刷り3000部ほどを売り切るのに、5年またはそれ以上かかると言われました。
販路は決して多くはないでしょうが、良書の古本を求める読者は時代を超えて絶えることはないでしょう。
私も20歳から神田を彷徨し、古書を通して成長しようと努めてきました。


貴店のますますのご発展を祈ります。

Best regards,


TANAKA Akio
14 December 2017

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